ラマン分光法では試料の「化学的な情報」を取得することができます。
例えば、試料が何の分子でできているか、といったことを調べることができます。
この記事ではラマン分光法とは?を実用例を踏まえご紹介します。
3分でわかるラマンのお話
2025年11月18日
ラマン分光法とは?
物質を分析するための手法で、試料中の分子の情報を把握することができます。物質にレーザー光を照射し、その散乱光を解析することで、分子やその構造の情報を得ることができます。
ラマン散乱光とは?
試料に光を当てると、光が散乱します。その試料内の分子から散乱された光は、多くの場合、同じ色(波長)の光が散乱されます。(レイリー散乱)
上記のような分子は、止まってはおらず、実際には動いており(振動)、一部の散乱光は、この運動により影響を受ける(変調される)ことにより、異なる色(波長)の光が含まれます(非弾性散乱)
この入射した光の波長と異なる波長の光(ラマン散乱光)が含まれる現象のことをラマン効果といいます。このラマン散乱光とレイリー散乱光との波長差は、分子の振動の情報を含んでいます。分子の振動はそれら分子固有のものであることから、ラマン散乱光を分析することで、分子種の特定など試料の化学的な情報を得ることができます
ラマン分光器とは?
- 有機・無機材料によらず、化学構造や分子構造を分析する装置として、電池やディスプレイ、食品科学、医療・医薬品分野など非常に多くの分野で利用されます。
- 非接触・非破壊で分子を識別可能なため、多くの分野で利用されています。
- ラマン分光器の構成:
-散乱光のもととなる光源(レーザー)
-散乱光からラマン散乱光を取り出すための分光器 - レーザーの種類:
-405 nm 紫~青色のレーザー
-488 nm 青色のレーザー
-532 nm 緑色のレーザー ➡ 透明な物質
-633 nm 赤色のレーザー
-785 nm 赤~近赤外(線)のレーザー ➡ 色がついている物質
-830 nm 近赤外(線)のレーザー ➡ 黒などかなり色がついている物質
-1064 nm 近赤外(線)のレーザー
ラマン分光法のメリットとは?
1.前処理不要: サンプルの前処理がほとんど不要で、直接測定が可能
2.非破壊検査: サンプルを破壊せずに分析可能、貴重なサンプルの検査に適している
3.多様な状態のサンプルに対応: 固体、液体、気体といったさまざまな状態のサンプルを分析可能
4.水の干渉が少ない: 水中でも測定が可能であり、特に生物学的サンプルや水溶液の分析に有利
5.迅速な測定: 測定が比較的迅速であり、大量のサンプルを短時間で分析可能
どんな用途に使える?
プラスチックの分別
我々には同じように見えるプラスチックですが、材料・分子が異なります。リサイクルなど、試料の材料によって試料を分別すること上記の例では、PPとPETの違いをラマン分光法によって見分けることができた例です。
酒類のアルコール濃度計測
ラマン分光法を用いると、水溶液中の物質を計測することができます。上記の例は、酒類のアルコール濃度計測行った例であり、複雑な解析を必要とせず、かつ5%~100%までの幅広いダイナミックレンジでアルコール濃度を定量することが可能です。
単層グラフェンの計測例
炭素材料(グラフェン)の構造的特性と品質を評価するため、ラマン分光法が用いられます。Gバンド(約1580 cm-1、結晶性を表す)やDバンド(約1350 cm-1、欠陥や不純物を表す)を計測し、そのピーク比率を計算することで、グラフェンの品質を評価することができます。
製薬・バイオ・プラスチック・食品・飲料・半導体・材料開発・等々、様々なアプリケーションで利用されています。
誰でも簡単に使える?
生成AIを搭載したソフトウェア
従来の、タブやボタン・設定が多数配置されたインターフェースを無くし、チャット形式でデータを解析するソフトウェアを開発しました。「解析したいこと」を打ち込むと、生成AIが自動的に解析内容を理解し、自動的に解析することができます。この機能により、ソフトウェアの使用法を学ぶ導入コストや、ルーチン作業の時間的コストを削減することができます。例えば、データの前処理において、ベースラインを削除したいときに、「ベースラインを削除して」と入力すると、自動的にベースラインを削除します。また自動的にピーク位置を計算するなどが可能です。(上:ベースライン削除、下:ピーク位置認識)
メタセンシング・ラマン装置の特徴は?
メタセンシング株式会社では、小型・顕微鏡アタッチ式ラマン分光装置を製造・開発しています。従来製品よりはるかに小型であり、顕微鏡にアタッチすることができ、従来のラマン分光装置よりはるかに安くラマン分光測定を行うことができます。
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| <特徴> お持ちの顕微鏡にわずか1分で装着可 ・従来品の1/10の価格 ・高感度な顕微ラマン分光 ・リモート操作可能 ・世界最小ラマン分光センサ |
※本記事はメタセンシング株式会社の提供情報をもとに、計測・試験機器総合Web展事務局が作成いたしました。

